「やだ! 可愛い!」

リングの上でボクは相手選手にそう叫ばれてしまった。

ここは地下ボクシング会場、地区はB地区で素人参加も可能だ。

相手はお姉さんタイプのボクサーで「萌」さんという名前らしい。

お姉さんなのに萌えか。実際、ボクにギラギラとした目を見せているからそんなに可愛いもんじゃない。

どちらかというとフェロモンをムンムン出してる。

 

ボクは俗に言う男の娘。変声期も来る気配は無いしヒゲも生えない。

この「可愛い」っていうのは嬉しいけど、勝たなきゃね、勝ってギャラもらって

欲しい服を買いたい。

 

リングの中央でルール説明。ルールはあるようで無いから聞き流しておこう。

裏拳とかダウン追撃ルールが有る位だからね、それより……。

お互い裸だから、相手のあそこが気になっちゃって……。始めて女の人の素っ裸(

とはいってもグローブだけはしてる。後はマウスピースだけだけど)

毛が薄くて割れ目っていうのかな?それが見えるし、女の人独特の甘い香りがする。

 

ルール説明が終わってお互いにコーナーに戻る時

 

「壊しちゃおう♪」って聞こえた。ボクは真っ青な顔をして振り向いたよ。

そしたら相手もなにげに振り向いてて笑ってた。五体満足で試合が終わりますように。

 

カーン

 

ゴングが鳴るとボクは弾丸。相手目掛けて一気に勝負をつけたい。

 

「たぁぁぁぁっ!」気合十分にストレートを打った。ジャブからコツコツ攻めると絶対に

徐々に押されてボコボコにされちゃうよ。

 

ずむぅっ! とグローブが吸着するように当たり、そのまま吸い込まれてグニュッとした感触がした。

よく見ると萌さんの左おっぱいにグローブがめり込んでいた。

「かはっ! かはっ!」

萌さんが咳き込んだ、そして会場は沸いている。こういうのがウケるんだと思った瞬間にボクの体は

少し浮いて鈍いダメージを感じた……これ腹部だよね。

当たり。ボディアッパーを打ち込まれたみたいで衝撃で体が浮いてるんだ。

 

腸のねじれるような感じがして、苦しさが徐々にこみ上げてきた。胃がドックンと脈打ったと思ったら

思わず嘔吐してしまった。それだけ苦しい。

 

「ううっ……がふっ、がふ。おえっ」

顔はきっと真っ赤に見えるだろう、ボクはへたばって四つんばいでひたすら吐いた。

試合前には何も食べていないので透明な胃液がダボダボとひたすら吐き出される。

 

立たなきゃ。こんな一発で終わったら何の為に試合するのを決心したのかわからない。

ボクは「令(れい)」って言うんだけど、いつも学校で馬鹿にされてる。

ホモだのゲイだの。ボクは女の子がちゃんと好きなんだけど、言い合いになった後にすぐ殴られる。

だから勝って、出場者発行パスと、勝った証拠の映像を(後でこういう試合はすぐDVDになって

会場から出る頃には売店に並んでるらしい)ボクを馬鹿にする奴らに見せ付けてやるんだ。

 

だから立つ。立つけど腹筋が弱くて、しかも力を入れてない時にボディを喰らったからきつい。

正直、吐く時に血が出ないかちょっと怖かった。

 

「令君? 最初からおっぱい打ちは生意気だよ?」

萌さんは笑っている。全然効いてないんだ。でも一撃当てたんだからそこを追撃すれば……。

「うるさい〜っ!」

ボクは再度、右でストレートを打つ。さっきよりおっぱいにめり込んだ。効いたか?。

 

「ゲホッ! プゥっ!」

効いてる。萌さんが唾液といっしょに、なんかぬるっとした白いマウスピースを吐き出した。

口の中を守る為にある防具で歯型をとったいびつなマウスピース、それも顔を殴られて役に立つはずなのに

ボディで吐き出されちゃう。びとんびとんと跳ねるそれを見て、何となく無様だなと思った。

今度は逆のおっぱいを……萌さんのほうが背が高いんでボクは胸を打つのが丁度良い。

Dカップだろうか? ゆっさゆっさ揺れているおっぱいはアッパーに丁度良い高さだったので

ボクはためらわず逆のおっぱいへアッパーを打った。

「ぐうっ!」萌さんが唸る。おっぱいって結構効くんだな、そう思ってたら……。

 

 

アッパーでブルンブルン揺れ終わったおっぱい、それから逆のおっぱいから白い母乳が吹き出た。

ボクはそれを頭からシャワーのようにかぶって、生臭い匂いに包まれた。いけない。

勃起しちゃいそうだ。

だって萌さん自信、体に汗をかいて肌をテカらせた状態でハァハァ言ってるんだもん。

生臭いのは母乳だけじゃなくて、こっちに降りかかる萌さんの息もだ。

 

「初試合でやるねぇ……」萌さんがそう言ってフラリと倒れこんでくる。

ダウンかと思ったらクリンチをされちゃった。しっとりとボクに萌さんの裸体がからみついてきて……。

 

「勃起してるじゃない、女の子みたいな声と顔してるのに、やっぱり男なんだぁ。毛は生えてないけど」

そう言ってクリンチをしたままボクのあそこをツンツングローブでつついてくる。

 

「や、やめてよ!」ボクは萌さんを突き放したけど、刺激の余韻は残っていた。

 

出るな、これは出るなと思ったらやっぱり出そうだ。何かがこみ上げてくる。

じわーっと下腹部に何かが……躊躇してたら、おちんちんから勢い良く精液を発射してしまった。

こんな状況下でボクは射精をして、萌さんのおっぱいや顔に精液をぶっかけてしまった。

 

「ゲロもせーしも出したんだから、もう怖くないよね」

萌さんは舌なめずりをした、正直怖い。

 

ズバッ!

 

まずはフックを打たれた。ボクの口から唾液がビシャァッと吐き出されてマットの上に散る音がする。

次に逆のフック。

 

ズバッ! といい音が鳴る。ボクの頭には脳が破壊されたんじゃないかっていうほど轟音がするけど。

再度唾液をビシャァッと吐く。

 

そしてズムッと重たいボディ、これがフィニッシュみたいだ。胃はドクンドクンと動くけどもう何もでない。

それでもさっきのように四つんばいになって、げぇげぇするしかない。僅かに残った胃液が

糸を引いて滴り落ちる。

 

「前座だから時間的にもこんなモンでしょ」

萌さんの声がする。確かに始めての試合だし前座。でもボクは勝たなきゃ。

立ち上がろう……苦しいケド。

 

でも立ち上がるとすぐにフックを打たれる。リーチの差でボクがパンチを打っても届かない。

ダメだ。滅多打ちになってどんどんボクはボロボロになって行く。

 

「ぶはっ!」

口の中が鉄臭くて吐き気がして、ボクは思わずマウスピースを吐き出した。

それは血みどろで、何か内臓でも吐き出したんじゃないだろうかと一瞬疑った。

それはヌチャグチャと血と唾液を混ぜながら転がって行く。

 

じきに萌さんのフックを喰らう度に吐き出すのは血になった。

ボディを喰らわなくても散々ボロボロにされたおなかの奥の胃には絶えずダメージの余韻が残っていて

吐き気で咳き込むようになった。

 

ラウンドは重なるけど、インターバルの一分じゃあ回復するワケがない。負けは決まったなと思った。

 

でも一つだけ思うのは、萌さんはもうボクが完全なサンドバッグになって抵抗しないと考えてるんじゃあないかな。

 

だからボクはその時を待った。

 

ボーッとした頭でパンチを見ていると、かいくぐれそうな気がしてきた。やるぞ!

体を斜めにしてボクは突撃した。

そして狙うのは……躊躇ったけど目の前にある割れた腹筋。どうか効きますように!

 

「だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

そのボクの声が良かったらしい。萌さんはビックリして腹筋を緩めたのだ。

 

ずぼぉっ!

 

手応えが合った。それは見てもわかる。これだけめり込んでいたら……。

そーっと萌さんの声を見上げる。

半分白眼で体をプルプル震わせている萌さん。はっきりと効いた!。

もう今しかない、チャンスは今しかないんだ!。

ボクはアッパーを突き上げた。おっぱいに当たり、それをぶるんと跳ね除けて偶然にも萌さんの顎を

突き上げた。

ブシュゥッ! と噴水のように唾液を吐きあげた後

 

「んごぶっ!」と妙な声を出して萌さんはマウスピースをデロリと吐き出し、ダウンした。

遂にやった。

 

だけど、その瞬間に萌さんがギョロッとこっちを見て……。

 

 

鼻がキナ臭くなり吹き飛ばされた。顔面にまっすぐパンチを打ち込まれたらしい。

 

「あああ……あああ」

ボクは情けない声を出した。鼻血がボドボド垂れてきたから。

そこで目の前に萌さんの影が差した。

そういえばダウンへの追撃が可能だったっけ……。

 

そう思った時にはもう一発顔面にパンチを打ち込まれた。

「げほげほげほっ!」

ボクは何がなんだかわからなくなってひたすらむせた。

そのままゴロンと後ろへ転がってダウンした。

とてつもなく効いた。とてつもなく……。体の力が抜ける。

その時、下腹部に変なキモチが。

 

おしっこが出てしまったみたいだ。最悪だと自己嫌悪に陥る前に、まず思い切り恥ずかしがるのが先だった。

 

「萌さん、見ないで!」

 

「ふぅん、見た目はオンナノコなのにちゃんとオチンチンがあって、そこからおしっこ出ちゃうわけね」

ボクの中で「萌」さんが「萌お姉」さんになった。主導権はこの人にあるんだ。

「助けてあげようか?」

萌さんのその言葉は(そろそろ楽にしてあげようか?)という意味らしい。

もうどうでも良かった。ボクは恥ずかしい……オンナノコみたいに股を広げたまま……。

 

どぅっ!

 

 

あおむけに倒れている僕のボディに強烈な一撃が振り下ろされた音だった。

来る、来る。

 

 

「来るっ!」

ボクはなぜだかわからないけど、そこで思い切り射精をしてしまった。

濃いし量が多いし、激しくドプッドプッと飛び交う。

ボクのおなかにボタボタ墜ちてきて精液で体がテカっている。

これで果てる事が出来る。精子いっぱい出したし、気も遠くなってきた……。

 

 

これがリングに沈んだってことかな、体がリングの上からズブズブ埋まっていく感触。心地よかった。

そのまま……。

 

試合が終わってボクはトボトボ歩いていた。

「カワイイなぁー」

萌さんだ。ボクのことを珍獣みたいな目で見てる。

ワンピース姿のボクを見て

「カワイイな〜」を連呼している。

でも顔はボロボロなんだよね、もう帰ろう。そう思った時。

「なんか今日の勝った賞金でキミをコーディネイトしたくなっちゃった」

「えっ……」

萌さんが腕を組んできた。

「さ、いこっ、春服でカワイイの買ってあげるからさ」

「え、でも」

「いーじゃん、私にさんざん静止をぶっかけたくせに」

 

 

も、萌さん……。

 

END